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石割京大農園とは

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わたし

間藤(まとう)と申します。平成19年7月に京都大学農学部植物栄養学研究室の教授になりました。石割京大農園の説明をさせていただきます。

 

植物栄養学

ちょうど私たち人間が、糖質、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルを栄養素として摂取して生きているように、植物も生きていくために必要な物質を外界から取り入れています。植物栄養学は、植物が生きていく上に欠かせない栄養素が何か? それらをどのように獲得しているか? を研究する学問領域です。
農業は作物、畜産物を人間に食料として供給してきました。作物を生産する上で欠かせないのが肥料です。植物栄養学はもともと作物をたくさん収穫するためにはどのような養分を与えたらよいのか?という疑問から研究が始まり、たくさんの栽培試験を行って、どのような肥料をいつ、どのくらい与えたら、高い収量でよい品質の作物が収穫できるか?という知識を積み重ねてきました。

農業と農学

この肥料をこのくらい土に撒いたら、このくらい収穫できた…、この肥料成分は植物体内でこのように利用される…、吸収されるとこのような物質に変化する…、この成分の利用には光が必要だ…などなど、肥料の研究を進める中で科学的な事実が抽出されていきました。科学は真理を追究します。新しい知識を得たい、もっと知りたい、神(創造主)の業(わざ)を明らかにしたい、というのは人間の業(ごう)でもあります。真理を追究しはじめた科学者は、例えば、イネとダイコンの違い、京都と富山の気候の違い、東京と京都の土壌の違い、近代的な農家と古典的な農家の違い、このような細かい違いをどんどん切り捨てて、植物個体や植物細胞の根源的な性質や特徴を探求するようになっていきました。グローバルに成果を競うためには、日本とアメリカの環境の違いが邪魔になる場合さえありました。こうして農業の現場で、お百姓さんの疑問に答えるために創始された肥料学は、次第に植物の栄養を科学する植物栄養学になっていきました。このような関係は、作物育種学と植物遺伝学、農薬化学と有機化学、園芸学と植物生理学、などに見ることができます。

第一線の研究者たちは研究にどんどん深くのめり込みながらも、そこで得られた、細胞や遺伝子、タンパク質での研究成果を農業生産に還元すれば、農業の技術革新はますます進むだろうと考えました。しかし、農業は、作物種、品種、気候、土壌、ヒト、これらすべての細かい因子が統合されてできあがるものですから、それぞれを別々にいくら詳しく研究しても、それらすべての因子の研究成果を統合する努力をしなければ、農業の姿は見えてきませんし、農学として役立つものにはなりません。現在の状況は、まだ、この再統合をどのように実行したらよいのかを考える研究者が少なく、例えば、有機栽培された作物が慣行農法で栽培された野菜とどう違うか? 遺伝子組み換え作物が品質的にどのように違うのか、その栽培は環境にどう影響するのか? 畑から溶脱された硝酸イオンがどのように地下水に蓄積されていくのか? などの疑問は解決されていません。農学はこうして得られた新しい知識を農業に生かす、すなわち、私たちの生きていく環境をよいものに保ち、十分な食料を生産し、食料を生産する人も消費する人も幸せになること、に役立つ学問であるべきでしょう。心ある研究者は、どんどん狭く深くなる科学と、多くの問題を抱え込みつつある農業との乖離に心を痛めています。このような状況を改善する一助として、植物科学の最先端に携わる研究者や学生が直接農業に接しお百姓さんと話をする「場」が必要なのではないかと考えました。

ishiwari石割照久さん

わたしは平成10年頃から大学での仕事に加え、京都府の審議会の委員なども委嘱されるようになってきました。それまで、お百姓さんと話したこともないし、畑の土壌の分析もしたことがなかったので、最初はお百姓さんたちが何に困っているのか理解できませんでした。しかし、みなさんはとても優しく、農学部の先生というだけで知識や経験のないわたしを盛り立ててくれました。

平成23年秋、農学部の遺伝子工学や植物生理学を勉強する学生たちこそが、実際の作物栽培、農作業を経験するべきだという思いを具体化するため、よく相談に乗ってもらっていた京都市西部農業振興センター高木さん、須蒲さん、久世さん、清水さんに相談して、吉祥院の農家石割照久さんを紹介していただきました。石割さんは大学を卒業された後は半導体関係の会社で営業を担当されていましたが、家業を継いで就農されたと伺っています。会社員時代の経験を生かして、消費者や料理人が食べたくなる、使いたくなる、商品として魅力のある京野菜を栽培することにかけては第一人者です。

石割京大農園

この農園はもともと京都大学の官舎が建っていたところで、土壌は白川が運んだまさ土です。まさ土は白っぽく砂がちのあまりよい土ではありません。石割さんに現地を見ていただいたところ、「こういう土壌ならそれに適した作物と、それに応じた栽培方法があるよ」とのお話でしたので、平成23年の秋、石割京大農園はとにかくスタートしました。その後の活動の様子は写真やnews、diaryからご覧ください。この農園はこのような趣旨で開設され学生たちが自主的に運営しています。野菜の栽培に興味ある学生さんの参加をお待ちしています。